「算数ができるようになってほしいけれど、幼児期に何をしたらいいか分からない」「小学校に入学した後に算数嫌いになったり、ついていけなくなったりしないか不安」などと悩んだことはありませんか?
私も同じように幼児期の子どもの算数教育について悩みました。
私の夫は高校の数学教員として日々、数学教育に向き合っています。夫と娘が関わっているのを観察したり、夫と子どもの教育について話したりする中で、幼児期にどんな算数教育をすればいいのか気づいたことを夫の力を借りながらまとめました。
実際に私の娘は家庭内の教育だけで、就学前に足し算・引き算ができるだけでなく、問題を出したり式を立てたりすることができるようになりました。娘は自主的に楽しんでワークをやり、そして何より算数が大好きです。
本記事は幼児向けの算数教育についてまとめたものです。この記事を読めば、自分の子どもが小学校に入学するまでに「何をすればいいか」が分かります。それだけでなく算数・数学の本質を理解することで将来的なあと伸びにも期待できます。
学習指導要領とは何か?
文部科学省の「学習指導要領とは何か?」によると次のように書かれています。すでにご存知の方や興味がない方は本章を読み飛ばしていただいても構いません。
全国のどの地域で教育を受けても、一定の水準の教育を受けられるようにするため、文部科学省では、学校教育法等に基づき、各学校で教育課程(カリキュラム)を編成する際の基準を定めています。これを「学習指導要領」といいます。
学習指導要領とは何か?:文部科学省
「学習指導要領」では、小学校、中学校、高等学校等ごとに、それぞれの教科等の目標や大まかな教育内容を定めています。また、これとは別に、学校教育法施行規則で、例えば小・中学校の教科等の年間の標準授業時数等が定められています。 各学校では、この「学習指導要領」や年間の標準授業時数等を踏まえ、地域や学校の実態に応じて、教育課程(カリキュラム)を編成しています。
簡単にいうと、教科書の作成や各学校の授業は全て、学習指導要領に則って行われているということです。つまり、この学習指導要領を読むことで日本の現在の学校教育について理解できます。本記事内では学習指導要領という言葉が出てきますので、ここで概要を取り上げました。
学習指導要領を読めば、日本の教育がわかる!
算数の幼児教育で学びたい4つの分野
学習指導要領によると小学校第1学年における算数の学習内容は、「A 数と計算」「B 図形」「C 測定」「D データの活用」の4つの分野で構成されています。これをもとに幼児の算数教育で抑えておきたい4つの分野を考えると以下のようになります。
- 数の概念と足し算・引き算 ← A 数と計算
- 図形の概念 ← B 図形
- 量の比較と時刻の読み方 ← C 測定
- データを整理する ← D データの活用
「数の概念」と「足し算・引き算」
数の概念を理解することは、子どもがその先で、算数・数学を学習していく上で最も重要になります。“数“を理解することと、“数の概念“を理解することには大きな違いがあります。「いち」「に」「さん」…と数を言えることや数字の読み書きができることだけで数の概念を理解したとは言えません。それでは数の概念を理解することとはどういうことなのか以下で詳しく説明していきます。
「概念を理解する」≒「本質を理解する」
数の概念とは「集合数」と「順序数」を理解すること
「集合数」とは、ものの多さを表す数のことを言います。全部で“何個“のように表現する数のことです。
「順序数」とは、順序を表す数のことをいいます。列に並んだ時に、左から“何番目“のように表現する数のことです。
日常生活の中で、お子様の集合数と順序数の理解がどれくらい進んでいるのか意識的に観察してみてください。
「数字」「数唱」「計数」の3つの関係性を理解することで数の概念が理解できる
「数字」とは、アラビア数字(1, 2, 3 …)や漢数字(一、二、三 …)のような文字自体のことです。
「数唱」とは、「いち、に、さん…」のように数を唱えることです。
「数量」とは、1個、2個、3個のようにものの個数や量を表すことです。
これら数の3要素をそれぞれ理解するだけでなく、この3つの関係性の理解できてくることで「数の概念」の理解が進みます。この3つが揃うことで、「3」を読み書きでき(数字の理解)、具体物を見ながら「1, 2, 3」と声に出して数えることができ(数唱の理解)、それにより具体物が3個あると理解(数量の理解)できるのです。
つまり、「3(数字)」=「さん(数唱)」=「3個(数量)」という関係性が理解でき、具体物が何であるかに関係なく「3個」は「3個」であり、「3個」「3番目」「3円」の「3」は全て同じだという数の概念が理解できることになります。
算数嫌いにならないために「足し算・引き算」の本質を理解するための4つのステップ
「1+2=3」や「3−2=1」といった計算ができるようになったから「足し算・引き算」を理解したとは言えません。計算は繰り返し訓練すれば、意味が分からなくてもできるようになります。しかし、「計算できること」が「その計算が何をしているか分かっていること」とは違います。
誰もが算数や数学で思い当たることがあると思います。例えば、九九、分数の割り算、三角形や円の面積公式、二次方程式の解の公式、微分の計算などです。暗記することがダメだと否定しているわけではありません。
ただ、特に幼少期においては、単純計算の反復訓練や公式の丸暗記よりも本質的な理解を意識した方が算数嫌いにならず、将来的なあと伸びにつながります。
ここでは「足し算・引き算」の本質を理解するための4つのステップを紹介します。
「計算ができる」≠「本質を理解している」
①具体物の“個数“で意味を理解する
まずは、具体物を想定しながら「1個と2個を合わせたら何個になる?」「3個から2個取ったら何個になる?」といったように「足し算・引き算」という言葉や数式を使わずに“個数“で意味を理解します。意味をしっかり理解できた上で数式を導入しないと計算のやり方だけを覚えようとしてしまうので注意が必要です。
②数式で表現したり、数式の意味を読解したりする
次のステップは、「1個と2個を合わせたら3個になる」を「1+2=3」と数式で表現できることや「3−2=1」を「3個から2個取ったら1個になる」と数式の意味を読解できることです。ステップ①で理解したことに数式を対応させることになります。ここで「具体物での意味(日常世界)」と「数式(算数・数学の世界)」の対応が理解できることになります。基本的には、就学前にここまで理解していれば十分です。
③計算ができる(10以上が出てこない1位数でよい)
ステップ②までを理解した後に「1+2=?」「3−2=?」と言った計算練習に入ります。「足し算・引き算」をできるようにしたいと思い、初めから計算練習を繰り返すと、意味はわからないけど答えが出ている状態になります。また、子どもによっては、同じような計算の作業を繰り返すことで算数がつまらなく役に立たないものだと認識し、算数嫌いになってしまいます。
時間や手間がかかりますが、しっかりとステップ②までの段階を踏むようにしましょう。計算は訓練さえすれば、後から誰でもできるようになります。
幼児期は計算よりも本質的な理解を優先する!
④【発展的】“個数の増減“ではなく“点の移動“で理解する
ステップ④は、小学校1年生の算数の学習指導要領には含まれていない発展的な内容ですが、今後の学習を考えた時にこれを意識しておきたいという内容です。子どもが理解できなくても、教える人がこのように考えるメリットを理解しているだけで将来的に大きな差になります。
ここまでは「足し算・引き算」を“個数“の増減で考えてきましたが、ここでは“点の移動“で考えます。例えば、「1+2=3」を「1の場所から右に2進むと3の場所に移動する」、「3−2=1」を「3の場所から左に2進むと1の場所に移動する」のように考えます。“場所“の意味が分かりづらい場合は、「すごろく」でイメージするのがオススメです。簡単に下の図のようなものを用いてもいいと思います。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
「足し算・引き算」をこのように理解することができると、中学校の数学で学習する「負の数」を小学校の学習内容の延長で自然と理解できます。「負の数」は数学でつまずくポイントの一つになっていますが、それは“個数の考え方“から脱却できないことが原因です。
例えば、「2−3=−1」と考えるときに“個数の増減“で考えると「2個のものから3個は取れない」となってしまいますが、“点の移動“で考えると「2の場所から左に3進むと−1の場所に移動する」と理解できます。また、「1ー(−2)=3」になると“個数の増減“では考えるのがさらに難しいですが、“点の移動“で考えると「1の場所から左の逆に2進むと3の場所に移動する」言い換えると「1の場所から右に2進むと3の場所に移動する」と理解できます。
“点の移動“の考え方は「数直線上を点が動くこと」に対応しているので、独自の考え方ではなく数学の本質的な考え方です。
図形の概念
幼児期は、図形の概念の基礎を育む大切な時期です。図形の概念とは、図形の形状や配置に関する理解のことです。また、それぞれの図形の性質や特徴、関係性、さらには長さや面積、体積へと発展していきます。これを踏まえて、図形の概念を本質的に理解するための3つのステップを紹介します。
①身の回りの様々な図形に親しむ
まずは、身の回りにある様々な図形に親しむことです。初めは図形に対しての興味・関心を高めたり、実際の体験の中で刺激を与え、図形に親近感を持ったりすることが重要です。
図形に親しむことなく、「さんかく、しかく、まる」と言った図形の名前や「三角形は頂点が3つある」といった図形の性質を教えられると、それを覚えることが図形の学習だと思ってしまいます。そのことで本来の図形の面白さを味わうことができず、嫌いになってしまう子どももいます。
最初はただただ様々な図形を見たり、触ったり、感じたりすれば、子どもの方から自然と図形の名前や性質を尋ねてくるでしょう。そのタイミングで次のステップに移ればいいのです。
図形に親しむ方法としては、以下のようなものがあります。
- 日常生活や散歩で様々な形を見る
- 絵本の中で図形を味わう
- 折り紙を折る、切る
- 積み木やブロックなどのおもちゃで遊ぶ
五感を使って多くの体験を積むことが大切です。特にオススメしたいのは、積み木やブロックのように実際に手を使い図形を扱う遊びです。手先を使うことで脳が刺激されることに加え、実際に体験したことは記憶にも残りやすくなります。繰り返しになりますが、重要なのは図形に親しみ楽しむことです。
まずは図形に親しむこと!
②ものの形のみに着目し、図形の名前を理解する
図形に親しんだ次のステップは、図形の名前を理解することです。身の回りの具体物は、色や大きさ、位置や材質などの要素でできています。その中からものの“形“のみに着目し、ものを捉えることが必要です。
子どもが2つの違うものに対して「(形が)同じだね」と言うようになったら“形“にのみ着目して捉えられている証拠です。そのタイミングで図形の名前を聞いてきたり、大人の発言から図形の名前を理解したりします。子どもの中で、図形の“形“と「さんかく、しかく、まる」といった図形の“名前“がつながるのです。一方的に図形の名前を教わるのではなく、このように体験の中から自ら身につけるのが学習において重要です。
体験から学ぶことが重要!
③それぞれの図形の特徴に自ら気づく
ステップ①で図形に親しみ様々な図形に触れ、ステップ②で形を捉えられるようになったら、その図形の持つ特徴に気づき始めます。
「三角や四角は丸と違って角(かど)がある」や「三角は角が3つある」「サイコロは転がらないけどボールは転がる」といったような図形の特徴について言うようになります。子どもたちが自ら気づけるように支援するのは構いませんが、一方的に図形の性質を教え込むことは控えましょう。
また、「三角形とは…である」と言ったような図形の定義については子どもの発達段階に応じて教えればいいので、幼児期には不要であると言えます。言葉や性質を習得することよりも、図形に対する興味・関心や自ら気づく過程を大切にすることが将来的なあと伸びにつながります。
幼児期は知識の習得より、興味・関心や理解の過程が大切!
量の比較と時刻の読み方
算数では、様々な「量の把握」と「その測定の方法」を理解することも目標となっています。そのための基礎として、様々な量の比較と時刻の読み方を身につけておくことが必要です。
量の大きさの直接比較と間接比較
身の回りの具体物に触れる中で、長さ、広さ、かさなど様々な量の大きさを比べるようになってきます。初めは「大きい、小さい」で大きさを比べますが、徐々に「長い、短い」「広い、狭い」「多い、少ない」など様々な量の概念が理解できていきます。
言葉や量の概念を習得することよりも、まずは比べようとする意欲や比べ方のプロセスが重要です。日常生活の中でも「どっちが大きいかな?」「どっちのコップに水が多く入っているかな?」と問いかけ、クイズのように楽しみながら量の大きさを比べる感覚を身につけていくことをおすすめします。
また、量の大きさを比べる時は、直接重ね合わせることで比べる直接比較と別の媒介物を使って間接的に比べる間接比較があります。子どもが量の大きさを比べている際は、どちらの方法で比較しているか観察しながら、直接比べられない時には「どうすればいいかな?」と問いかけることで自ら考えるようになります。繰り返しになりますが、結果的に正しく比べられることよりも、比べようとする意欲や比べ方を考えるプロセスが大切です。
量の大きさを比較することの応用として、「AはBより大きい」「BはCより大きい」では「AとCはどちらが大きいか?」と言ったような論理的思考力が必要な問題にも挑戦すると、さらに考える力が育まれます。
日常生活と関連づけるながら時刻の読み方を身につける
日常生活や学校生活において、時刻を読んで行動することは必要不可欠です。小学校1年生の算数で時刻の読み方は習いますが、入学前にできると日常生活におけるメリットも多いです。
しかし、ここで注意したいのは、ただひたすらドリルを繰り返し時刻の読み方を身につければいいのではなく、日常生活と関連付けながら段階を踏んで時刻を読めるようになることが重要だという点です。
時計を見てすぐに何時何分と答えられることよりも、「そろそろ15時だからおやつの時間だね」や「テレビを大体30分見たからそろそろ一旦休憩だね」といったように日常生活の場面において必要な力として身につけていくことが大切です。ひたすらドリルの繰り返しでは時刻を読むことも公式を暗記するようになり、学習することが嫌いになってしまいます。
時刻の読み方としては、次の3つのステップで教えるのがおすすめです。
- 短針の読み方「時」を教える
- 長針の読み方「ちょうど」「半」を教える
- 長針の読み方「分」を教える
繰り返しになりますが、大切なのは時刻を正確に読めることよりも日常生活と関連づけられることです。家庭の中で見える位置にアナログ時計を置き、「時計の長い針が5になったらテレビおしまいだね」や「時計の短い針が3になったらおやつだね」、「今大体何時かな?」といった日常生活の声かけの中で少しずつ段階を踏んで身につけるように意識しましょう。
学習と日常生活を切り離さず、関連させる!
データを整理する
算数では、データを分類・整理したり、表やグラフにまとめたり、平均値などの代表値を求めて分析したりします。そのための基礎として、データを整理することが必要です。
データを整理することとは、例えば異なる長さの鉛筆がばらばらに置かれていて、「2番目に小さいものはどれか?」と聞かれた時に、まずは短い順に鉛筆を並べることで順番を分かりやすくすることです。他にも、様々な果物が混ざっているときに「りんごは何個?」と聞かれた時に果物の種類ごとに分けることです。数えやすくするための工夫といってもいいでしょう。
データの数が増えれば増えるほどデータを整理しなければ分析することができません。データを整理したり工夫しなくても数えられればいいのではなく、その先に膨大なデータを扱うことを考えると、整理すること、工夫すること自体が重要だということです。
日常生活の中でおもちゃを種類ごとに整理したり、絵本をシリーズごとに並べたりすることで十分です。その際に「整理すると見やすいね、並べると数えやすいね」と声をかけると、子どももその重要性を意識できます。
心配しないで!就学前に全てができる必要はない
算数の幼児教育で学びたい4つの分野を挙げましたが、これら全てを就学前にできる必要はありません。ここで挙げている多くのことは小学校入学後に学習することと重なっています。大切なのは「何ができるようになっているか」ではなく「本人がやる気になっているか」「どのようなプロセスでできるようになったか」です。
発達段階に応じた経験をすることが大切
子どもの発達段階に応じた経験をすることの重要性について文部科学省でも以下のように言っています。
子どもはひとりひとり異なる資質や特性を有しており、その成長には個人差がある一方、子どもの発達の道筋やその順序性において、共通して見られる特徴がある。子どもは成長するに伴い、視野を広げ、認識力を高め、自己探求や他者との関わりを深めていくが、そのためには、発達段階にふさわしい生活や活動を十分に経験することが重要である。特に身体感覚を伴う多様な経験を積み重ねていくことが子どもの発達には不可欠であり、これらを通して、子どもの継続性ある望ましい発達が期待される。
3.子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題:文部科学省
保護者として、他の子どもと比べたり、就学前にできるようにならなければと焦ったりする気持ちはよく分かります。しかし、本当に子どものことを考えるならば、発達段階を見極めて、ふさわしい経験を積ませる必要があります。無理に机に座らせて学習させるのではなく、実際の経験を伴いながら学ぶことがその後の発達にも良い影響を与えます。
すぐ目の前の点数や成果を求めず、将来あと伸びするための土台づくりの時期であることを認識し子どもと接するようにすることが重要です。
幼児期は土台のづくりの時期!
興味・関心が大事であり、嫌いになってまでやる必要はない
学習において大切なのは、学んでいる内容が面白い、もっと学びたいと興味・関心を持ち続けることです。それを失い、学ぶことが嫌いになってまで幼児教育をする必要はありません。特に算数・数学は面白さが分かって好きになる人と何をやっているか分からず嫌いになる人が極端に分かれやすい科目です。
子どものために良かれと思ってやっていることで子どものやる気や主体性が奪われていないか観察してみましょう。矛盾しているようですが、「算数の力をつけること」より「算数を好きになってもらうこと」を優先した方が結果的に算数の力はつくことを忘れないでください。
子どもが好きなもので日常生活の中から始める
就学前に何から始めればいいのか分からない方や、塾や通信教育をとにかくやればいいのかと思われる方もいるかと思います。しかし、まず初めは子どもが好きなもので日常生活の中から始めるのが良いでしょう。
好きなおもちゃで遊んでいる中でその個数を数えてみたり、散歩している中で様々な形に気づいたり、料理の手伝いをする中で重さを測ったりと遊びや生活の中に算数の学びがあります。算数の勉強というと親子とも構えてしまいますが、遊びや生活の延長であれば気楽な気持ちで楽しみながら学ぶことができます。
その先に「もっと詳しく知りたい」とか「体系的に学びたい」という気持ちが芽生え始めてきたら様々な教育の方法を検討してみるというのがおすすめです。
「公式や言葉の暗記」や「計算の反復ドリル」よりも「本質的な理解」
本記事内でも繰り返し触れてきましたが、「公式や言葉の暗記」や「計算の反復ドリル」よりも「本質的な理解」≒「概念の理解」を優先することが最も重要です。
必要な情報が簡単に手に入り、AIが質問に答えてくれるような世の中では、“答え“はすぐに見つかります。しかし、大事なのは答えに行き着くまでの“プロセス“やなぜその答えになるのかという“理由“の部分です。そして、私たちにとって本当に必要で大切な“答え“は調べても簡単には見つからず、自ら考えなければいけないことです。
学習指導要領には算数科の目標として「数学的に考える資質・能力を育成することを目指す」と書かれています。この資質・能力は「公式や言葉の暗記」や「計算の反復ドリル」ではなく「本質的な理解」を目指すからこそ育てられるものであり、私たち人類の未来に必要な力であると考えます。そのために幼少期から継続して、「本質的な理解」を目指す意識を大切にしていきましょう。
誰でも簡単!家庭でできる算数教育の方法4選
ここでは家庭内で誰でも簡単にできる算数教育の方法を4つ紹介します。それぞれの方法を使う目的や得られる力も違いますので、お子様の発達段階に応じながら全ての方法に挑戦してみることをおすすめします。様々なアプローチをした方が脳が刺激されますし、子どもも飽きずに取り組めます。
遊びや日常生活での声がけの仕方で算数を意識させる
一番簡単ですぐに実践できる方法が、遊びや日常生活で算数教育を意識した声がけを行うことです。筋力トレーニングでは鍛えている部位を意識した方が効果が高いと言われています。このように同じような行動をしていても、そのことを意識するかどうかで効果が変わります。
おもちゃで遊んでいる時や散歩をしている時、お手伝いをしている時に、数や形、量などに意識がいくような声がけをすると、算数の勉強をしているつもりはなくても自然と算数的な考え方ができるようになってきます。
簡単ですぐできる方法ではありますが、意識して実践し続けるのは、常に頭を使うので疲れますし簡単ではありません。しかし、継続的に続けることができたら自然と算数脳ができ上がり、あと伸びにも期待できる教育方法であると言えます。是非できるところから意識して実践しみてください!
絵本を読むことで目や耳で楽しみながら算数に触れる
絵本は算数に限らず、全ての幼児教育の土台となる教育方法です。言語の発達においても重要なことは言うまでもありません。
算数教育において絵本の優れている点は、「算数の学習のような内容でも絵や物語を楽しみがら学べる点」と「実際に存在しないものを扱えるので抽象的な算数の考え方に結びつけやすい点」です。絵本では本格的に算数の計算や概念を学習するというよりは、絵や物語を通じて目や耳で楽しみながら少しずつ算数の考え方や概念に触れることができます。
初めからドリルやワークのような勉強に入るのではなく、絵本を遊びと勉強のつなぎとして使うのがおすすめです。
知育玩具に実際に手で触れて経験しながら算数に興味を持つ
算数教育を意識した知育玩具を使う方法です。知育玩具は実際にものがあり、それを自分の手で触れて経験しながら学ぶことができる点が魅力です。
家庭でのドリルやワーク、小学校での授業や宿題が始まると机上で紙と鉛筆で算数を学ぶ時間が多くなり、実際に触れて感じて手を動かすような経験をする機会は少なくなります。だからこそ幼児期は、実際に手で触れて学ぶ経験を多く積むことが大切な時期です。
算数において重要なのは「算数の概念や本質を理解すること」と「実際のものや日常生活に生かすこと」の両方です。その土台を作るのが知育玩具で遊ぶことで得られる経験であると考えます。
学習教材を利用して体系的に算数を学ぶ
最終段階で行うのが、ドリルやワーク、通信教育などの学習教材を利用した学習です。多くの学習教材は、専門家の監修の下で体系的に学べるように作られています。
専門家ではない私たちでも、子どもたちの興味や関心を引きながら楽しく学ぶことはできますが、算数の様々な分野においてバランス良く、段階を踏んで、体系的に学習させるのは難しいです。そこで学習教材を利用することで、直接専門家に教えてもらわなくても家庭内できっちり算数の学習ができます。
ほとんどの学習教材が有料ではありますが、専門的な内容が分かりやすく丁寧にまとめてあるものも多く、タブレットでゲームのように学習できるものもあります。学習教材は様々な種類があるので、その中でも特におすすめのものを以下で紹介します。
家庭内の算数教育を助ける!おすすめアイテム7選
絵本や知育玩具、学習教材を選ぼうとしても種類も多く、何を選んでいいか分からない方もいると思います。そこでおすすめのアイテムを7つ厳選しました。気になったものがあれば是非試してみてください!
おすすめの絵本
はじめてであう すうがくの絵本1、2、3
「はじめてであう すうがくの絵本」シリーズは読みものとしても、算数教育の教材としてもおすすめの絵本です。
1は「なかまはずれ」「ふしぎなのり」「じゅんばん」「せいくらべ」、2は「ふしぎなきかい」「くらべてかんがえる」「てんてん…」「かずのだんご」「みずをかぞえる」、3は「まほうのくすり」「きれいなさんかく」「まよいみち」「ひだりとみぎ」というテーマで構成されています。
すうがくの絵本という題名ではありますが、数式は一切出てきません。言わずと知れた絵本作家である安野さんの独特な画風で描かれた小人たちとともに絵本の世界観にどんどん引き込まれていくので、数学に抵抗がある大人でもアレルギーを起こさず読める絵本であり、パッと見るだけではどこが数学なのか分からないかもしれません。
しかし、この絵本のテーマの中には様々な数学の概念や考え方が含まれています。本記事で紹介した4つの分野が全て触れられていますし、数式がないからこそ、暗記やテクニックではない本質的な考え方を知らず知らずのうちに感じることができます。何度も読むうちに新たな発見や気づきがあり、後から考えると意味が分かる部分もあります。
是非、3冊とも購入して手元において何度も繰り返し読むことをおすすめします!
とけいのほん①②
「とけいのほん①②」はその名の通り時計の読み方の勉強になる絵本です。赤ちゃん向け絵本で有名な「じゃあじゃあびりびり」の作者である「まつい のりこ」さんのかわいらしいタッチで描かれた時計の短針と長針が時刻を刻みながら進んでいきます。
本記事内で紹介した“時計の読み方“と同じ3つステップで時計の読み方が進んでいくので分かりやすく読ことができます。この絵本を読むだけですぐに時計が読めるようになるとは言えませんが、最初に時計の読み方に興味を持つきっかけにするにはベストな絵本です。
①だけだと物語や時計の読み方が途中で終わってしまいますので①と②の2冊セットで購入することをおすすめします!
どちらの絵本も「絵本ナビ」で購入できます。試し読みもできます。
かわいい絵本キャラクターグッズも販売しておりますので、自宅用やプレゼント用にもおすすめです!
おすすめの知育玩具
マグフォーマー ベーシックセット(62ピース)
様々な形を磁石でくっつけて平面や立体で自由に作ることができる知育玩具です。子どもは図形の学習だと考えずに、ただただ好きなものを作るだけで楽しめます。磁石でくっつくので、子どもでも簡単に平面図形を使って立体を作ることができます。その中で、図形に親しみながら、少しずつ図形への興味・関心が芽生えてくるでしょう。
また、マグフォーマーは様々な種類の商品が販売されておりますが、ベーシックセット(62ピース)がおすすめです。ベーシックセットの中身の内訳は正三角形が20個、正方形が30個、正五角形が12個です。これは正多面体を作るのに必要である絶妙な数になっており、正三角形で作れる正四面体、正八面体、正二十面体、正方形で作れる正六面体、正五角形で作れる正十二面体を全て作ることができます。また、62ピース全てを使ってできる斜方二十・十二面体は作るのは大変ですが、完成したものを見ると算数・数学の好き嫌いに関わらず感動します。是非、挑戦してみてください。
楽しそうに遊んだり、作ったものに感動したりする大人の姿を見ていると子どもも自然と「楽しそう」「やってみたい」と興味がわきます。
正多面体は高校の数学Aで学習する分野ですが、オイラーの多面体定理を含めて中々イメージしづらい分野です。マグフォーマーを使い、自分で実際に多面体を作ることで理解が進みます。値段は1万円ほどしますが、高校生まで使えると考えるとコスパも良いです。
知育玩具のサブスク「Cha Cha Cha」ではマグフォーマーを含めて、好きなおもちゃを選べます。
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キュボロ スタンダード
キュボロはスイス製で木製の知育玩具です。1辺5cmほどの立方体のブロックそれぞれにレールの溝が彫られていたり、内部に穴が空いていたりします。それらをうまく組み合わせることでビー玉をスタートからゴールまで誘導します。組み合わせは自由なので好きなコースをいくらでも作ることができます。
ピタゴラ装置のようなものを自分で作れる楽しさと、木とビー玉がぶつかる音がやみつきになります。藤井聡太棋士が幼少期に使用していたことでも有名です。子どもだけでなく大人も楽しめ、創造性や空間認識力、プログラミングに必要な論理的思考力が身につきます。
しっかりとしたコースを作るには難易度が高いですが、初めはビー玉を使わずに木のブロックを積み木として使ったり、レールだけを使ってビー玉を走らせたり、発達段階に応じて様々な遊び方ができ、長い期間遊ぶことができます。
値段は4万円ほどと高額ですので、購入に躊躇されると思いますが、私は買ってよかったと感じています。一度レンタルで遊んでみて検討するのもありかと思います。
「キュボロ」をレンタルできるのは知育玩具・おもちゃのサブスク「キッズ・ラボラトリー」だけです。
高額なので購入前に一度試したい方にもおすすめです!
くもん出版 空間パズル
3〜4個の立方体のブロックをチェック模様になるようにつなげた10種類のピースを使う空間パズルです。テトリスのようなピースを組み合わせて、平面や空間で様々な形を作れます。
発達段階に応じて、まずは平面だけで並べて、慣れてきたら空間に挑戦すると良いでしょう。空間で作る場合は通常の積み木と違い、ただ重ねることはできないため空間把握の感覚が自然と育ちます。実際に手を動かして図形に親しみながら、空間把握能力や問題解決力、論理的思考力を身につけられます。簡単な問題から、大人にとっても難しい問題まで幅広く準備されていますし、解き方も一つではありません。
値段は3,000円ほどですが、繰り返し遊べるパズルとなっているのでおすすめです。
知育玩具のサブスク「Cha Cha Cha」なら「KUMON」ブランドの取り扱いがあります。
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おすすめの学習教材
Z会の通信教育
紙の通信教育はZ会の一択です。その最大の理由は問題の“質“です。数学を専門的に勉強してきて現役の高校教員である夫もZ会の教材は質が高く、それは幼児向け教材にも当てはまると言ってます。難関大学の受験指導でZ会のテキストを採用することも多く、東大合格者の3人に1人がZ会卒だというデータ(東大生の4割学ぶ「Z会」 難問生み出す指導部155人)だけでなく、現場でも実際に東大に合格した中でZ会をやっていた生徒は多い印象のようです。
周りの声や口コミでは、Z会は「難しい」「頭の良い子向け」という印象が強いようです。一言で問題が難しいと言った場合に「本質的な問題で難しい」「思考力が必要で難しい」「計算が多くて難しい」「知識がない(習っていない)から難しい」「問題で聞いていることが分かりづらく難しい」「問題の前提や誘導、ヒントが不十分で難しい(問題作った人しか解けないのではという問題)」など様々です。Z会の問題の難しさは、本質的であることや思考力・考える力が必要であることからきています。しっかり考えればできる問題であり、解くことで確実に力がつく問題となっているのが、Z会の教材は“質“が良いという理由です。
親子で一緒に学習できるのもZ会幼児コースの特徴です。親子で一緒に取り組む体験教材である「ぺあぜっと」は忙しい中でも親子の時間を作るきっかけになります。親向け情報誌「ぺあぜっとi」では、ちょうどその時子育てで悩んでいることや必要な情報、子どもとの関わり方の参考になります。メイン教材である「かんがえるちからワーク」はシンプルな紙のワークです。初めのうちは子ども1人で取り組むことは難しいので親のサポートが必要であり、その中で思考力が必要な問題では一緒に考えたり、ヒントを与えたりすると効果的です。
学校生活が始まってからも先生や友達と関わりながら協働して学ぶ場面があり、その練習として親子で学習する時間は貴重であると思います。この後紹介するタブレット教材「RISU算数」は1人でもできるタイプの教材なので組み合わせて使うのがおすすめです。うちはZ会とRISU算数を併用しています。
Z会の教材は、付録や景品のおもちゃはほとんどなく、シンプルなワークが中心で問題数も決して多くはありません。その分、問題の質が高く、机に向かって学習する習慣が身につけられる点が魅力であり、「遊びやゲーム、おもちゃ」と「学習」をはっきり区別できるのが就学前の準備として適しています。受講会費は年間一括払いで年少2,465円、年中2,635円、年長2,975円で、他社教材と比べても決して高くはありません。
資料請求を行うと無料で教材見本が体験できます。下のボタンからお試しください。
Z会について、口コミや実体験を詳しく知りたい方は下の記事をご覧ください。
RISU算数(RISUきっず)
タブレット教材ではRISU算数がおすすめです。最大の特徴は、無学年制で子ども一人ひとりに合わせた問題をAIが分析し出題してくれる点です。無学年制で自分のペースで先取りしたり復習したりと個別最適化された学びが実現できるため、算数が得意な子、苦手な子のどちらにもおすすめできます。計算問題と思考力が必要な応用問題がそれぞれ出題され、文章量が多い問題も出題されるので自然と国語の力も身につきます。
就学前はRISUきっずから始めてクリア後にRISU算数へと移行する流れになります。RISUきっずは、東大生らの個別フォローと音声読み上げ機能があるため、子ども一人で学習でき保護者が常についている必要がありません。上で紹介した親子で一緒に取り組む「Z会」と合わせて使うのがおすすめです。うちはZ会とRISU算数を併用しています。
タブレットを使うという点と問題を解いてポイントを貯めることで景品と交換できる点から、勉強というよりもゲーム感覚で楽しめます。さらに無料で英語の動画教材もついています。RISUきっずの料金は、全てコミコミで年間一括で33,000円(月額2,750円)と塾や他の教材と比べてもリーズナブルです。
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RISU算数について、やめた理由や口コミを詳しく知りたい方は下の記事をご覧ください。
まとめ
「学問に王道なし」という言葉があるように、学習においてこれをやれば安心だというものはありません。複数の分野を多様な見方で学習する必要があります。その中で本記事は、一つの方向性を提案したものになっております。
それでは結局何をしたらいいかを簡単にまとめると「絵本」「おもちゃ」「Z会」「RISU算数」を全てやることです。一つ一つに良さがあり、やる意味があり、それらが互いに補完し合うことで学習効果はさらに高くなります。読むだけ、遊ぶだけ、紙のドリルだけ、ゲームのようなタブレットだけではなく、子どもにいろんな経験を積ませることが将来的な成長、あと伸びにつながります。費用がかかるものもありますが、結果として未来にかかる教育費や子どもの将来を考えると妥当な投資と言えるでしょう。
本記事は、文部科学省の学習指導要領に則して、一貫して算数の本質、子どもの将来性、あと伸びを意識しています。一人でも多くの子どもたちが算数・数学を嫌いにならずに、できるならばその本当の面白さに気づき好きになってくれることを願っています。
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